2021年12月20日

Ansys ソリューションによる STOP 分析の自動化

Category: Product News

多くのアプリケーションにおいて、応力や熱負荷は光学系の性能に大きな影響を与えます。構造、熱、光学性能(STOP)分析は、従来、航空宇宙・防衛やレーザー製造などの精密なアプリケーションの設計プロセスにおいて重要な役割を果たしていると考えられてきましたが、医療用イメージングから複合現実(MR)、自動車用ディスプレイから自律走行車用センサまで、これらの伝統的な市場以外のさまざまなアプリケーションにおいて、構造および熱要因の影響がますます重要になってきています。光学部品の小型化が進む中、プラスチック成形や 3D プリントなどの製造方法は、光学部品にさらなるストレスを与える可能性があるため、製品設計プロセスの一環として詳細な STOP 分析が必要となっています。

しかし、堅牢で正確な STOP 分析析を行うことは困難であり時間もかかります。この分析では、光学系の設計に使用したソフトウェアツールと、光学系にかかる熱や応力の影響を計算するための有限要素解析 (FEA) に使用したソフトウェアツールとの間で、何度も繰り返し作業を行う必要があります。これらのツール間で結果を転送するには、データの変換や通訳が必要です。変換では、光学パッケージが FEA の結果を解釈できるようにし、通訳では、光学パッケージとFEA パッケージが使用する異なる座標系間で結果を調整します。結果を手動で転送する場合、これらのデータ変換およびデータ通訳はエラーになりやすい。そのため、設計プロセスの各段階で結果を検証するために、設計チームは多大な労力を費やすことになります。このように、製造用の光学システムの設計には数週間かかりますが、完全な STOP 分析には何ヶ月、あるいはそれ以上の時間を要することがあります。

2021 年、Zemax 社は FEA ツールと OpticStudio 間のコミュニケーションを効率化するために、OpticStudio STAR モジュール[1] を導入しました。STAR により、あらゆる FEAパッケージのデータを、OpticStudio で直接使用できる形式に変換・通訳することができます。また、STAR は、FEA パッケージで計算された構造データや熱データが光学モデルに正確に表現されているかどうかを設計チームが容易に評価できるようにするための、重要な検証・確認ツールも提供します。また,ANSYS Mechanical [4]  からのデータのエクスポートを自動化するために,ACT(Ansys Customization Toolkit)[2]  と  APDL(Ansys Parametric Design Language)[3]  を使用してスクリプトを作成しました。これらのスクリプトを  OpticStudio API(ZOS-API)[5]  と組み合わせて使用することで,Ansys MechanicalSTAROpticStudio の間で完全に自動化されたワークフローを構築し、1 つの設計の包括的な STOP 分析を行うことができます。

この完全自動化ワークフローの重要な利点は、複数の設計をシミュレーションし、ばらつきを分析し,最適化できることです。20216 6 月に開催された  ANSYS WOST カンファレンス[6-7]では, このような分析を実証した概念実証(PoC)を発表しました.この PoC では,エンジニアリングシステムの堅牢なばらつき分析と設計最適化を行うためのスタンドアロンソフトウェアツールである Ansys optiSLang [8] を使用してワークフローを推進しました。すでに  OpticStudio   optiSLang は連携しており [9]、さまざまな光学パラメータが撮像および非撮像設計のシステム性能に与える影響を調査していました。最近の PoC では、この接続を STAR ANSYS Mechanical にも拡張し、構造または熱的な負荷が存在する場合の光学システムの性能を自動で分析・最適化できるようにしました [10]。また、この自動化により、有限要素解析の異なるタイムスライスの結果をプログラムで OpticStudio にインポートして動的特性評価を行うことができるため、設計の時間的な挙動を調査することができます。これは、自律走行車のカメラセンサのように、車両の移動や異なる環境条件の変化に伴って構造はまた熱的な負荷が時間的に変化するようなアプリケーションには不可欠です。

これまで STOP 分析は、特定のアプリケーションに携わる一部の専門家の領域に限定されていました。しかし、構造まはた熱的な負荷がますます多くの光学システムの動作に影響を与えるようになると、STOP 分析を設計プロセスの一部として組み込むことが重要になります。これは、OpticStudio STAR モジュールと、Ansys optiSLang によるワークフローの自動化によって可能になりました。その結果、次世代の光学製品は、これまで以上に堅牢で、正確で、信頼性の高いものになるでしょう。

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著者:

Sanjay Gangadhara

Chief Technology Officer
Zemax An Ansys Company

 

 

 

参照:

  1. https://www.zemax.com/pages/opticstudio-star-module
  2. https://www.ansys.com/training-center/course-catalog/structures/introduction-to-ansys-act-mechanical
  3. https://www.ansys.com/training-center/course-catalog/structures/introduction-to-ansys-mechanical-apdl
  4. https://www.ansys.com/products/structures/ansys-mechanical 
  5. https://support.zemax.com/hc/en-us/articles/1500005487921-ZOS-API-NET-An-Overview
  6. https://www.ansys.com/content/dam/events/event-pdfs/wost-conference-agenda-2021.pdf
  7. https://app.swapcard.com/event/wost-2021
  8. https://www.ansys.com/products/platform/ansys-optislang
  9. https://www.dynardo.de/fileadmin/Material_Dynardo/dokumente/Integration_Nodes/Zemax_Integration_2019.pdf
  10. https://www.zemax.com/blogs/webinars/optomechanical-workflow-with-opticstudio-star-module-ansys-mechanical-optislang