ここ数年、堅牢でスケーラブルな複合現実(Mixed Reality - MR)システムの設計・開発が大きく進展しています。MRの技術革新は、今日私たちが利用できる膨大な量のデータと、我々の生活、仕事、娯楽の環境をより充実させるためにそれらデータを活用したいという願望により促進されています。近年の技術進歩により、このようなシステムの使い勝手が向上し、その結果、防衛[1]、製造[2]、自動車[3]、ヘルスケア[4-5] など、従来の消費者市場にとどまらず、さまざまな業界でMRの需要が高まっていることは、非常に興味深いことです。

例えば、SPIE AR | VR | MRカンファレンスが、SPIE Photonics Westのサテライトイベントから独立したイベントへと "変化 "したことは、MRの継続的な成熟を示す一例です[6]。また、2021 年に世界各地で開催された「Zemax Envision」では、AR/VR(Augmented Reality - 拡張現実, Virtual Reality - 仮想現実)システムの設計・開発に関するさまざまなプレゼンテーションが行われました[7]。これらのプレゼンテーションの多くでは、光学およびフォトニクス業界全体で起こっている小型化の推進によって、MRがどのように恩恵を受けているかがわかりました。このような動きは、回折技術とカタディオプトリック技術の両方の進歩によって実現されています。

MRシステム設計の現状で最も興味深い点の 1つは、回折型と屈折型のどちらのソリューションがこの業界に適しているかについて、明確な答えがないことです。過去数年間、表面レリーフグレーティングや体積ホログラフィックグレーティングなどの回折型ソリューションには多大な投資が行われてきましたが、MRをサポートする複雑な非球面や自由曲面などのいわゆる「モダンジオメトリ」の開発にも同様の投資が行われています。例えば、プラスチック成形によって屈折部品をこれまで以上に小さく作ることができるようになったため、これらの部品を使って、高輝度で迷光の影響を受けにくい高性能なMRシステム[8]が構築されています。しかし、現在のところ、最小のARシステムは回折型部品を用いて開発されており、回折型部品を用いて開発されたシステムは、生成された画像を意図しない人が見ることを制限できるため、プライバシーやセキュリティが向上します。このように、回折型とカタディオプトリック型の両方のソリューションは、堅牢でスケーラブルなMRシステムの構築に有効である。

ここで重要な役割を果たすのがシミュレーションです。シミュレーションは、MRシステムを設計・開発するエンジニアや科学者に、詳細かつ効率的な調査を行い、さまざまなトレードオフを検討することで、アプリケーションに最適なソリューションを決定し、最適なシステムを設計する力を与えます。Zemax は、AR/VR のための回折型[9-10] およびカタディオプトリック型[11-12] の両ソリューションを設計するエンジニアをサポートする一連のツールを提供し、それによって次世代のMRシステムの開発を支援していることを誇りに思います。最近のニュースでは、コンシューマ分野でのMRの存在感が高まっており[13-14]、システムを支える技術の小型化がその大きな要因となっています。このように、MRは、何年も前に当初掲げられた目標を達成し始めています。AR/VR の旅は今始まったばかりですが、私はこの旅に参加できることを嬉しく思っています。

著者：

Sanjay Gangadhara
Chief Technology Officer
Zemax, LLC

参照：

1. https://news.microsoft.com/transform/u-s-army-to-use-hololens-technology-in-high-tech-headsets-for-soldiers/
2. https://finance.yahoo.com/news/ptc-provides-leading-ar-platform-130000191.html
3. https://virtual-strategy.com/2021/09/20/automotive-ar-vr-market-2026-receives-a-rapid-boost-in-economy-due-to-high-emerging-demands/
4. https://www.winwire.com/mixed-reality-in-healthcare/
5. https://theappsolutions.com/blog/development/ar-vr-in-healthcare/
6. https://www.spie.org/news/ar-vr-mr-2020_the-future-now-arriving?SSO=1
7. https://www.zemax.com/blogs/news/zemax-envision-conference-2021-agenda-is-live
8. http://virtualrealitytimes.com/2021/08/01/breakthrough-pancake-optics-could-usher-in-ultra-compact-and-stylish-vr-glasses/
9. https://support.zemax.com/hc/en-us/articles/1500005578722-Simulating-diffraction-efficiency-of-surface-relief-grating-using-the-RCWA-method
10. https://support.zemax.com/hc/en-us/articles/1500005490821-Simulating-diffraction-efficiency-of-a-volume-holographic-grating-using-Kogelnik-s-method
11. https://support.zemax.com/hc/en-us/articles/1500005577782-Which-tools-to-use-when-working-on-a-Head-up-Display-
12. https://support.zemax.com/hc/en-us/articles/1500005490761-Using-the-TrueFreeForm-surface-for-grid-based-freeform-optimization
13. https://about.fb.com/news/2021/09/introducing-ray-ban-stories-smart-glasses/
14. https://blog.mi.com/en/2021/09/14/xiaomi-unveils-xiaomi-smart-glasses/