2022年5月10日

OpticStudio でレーザー ビームの伝搬をモデル化する方法 : 第 2 部 - 近軸ガウシアン ビーム ツールによるガウス ビームのモデル化

Category: Product News

このブログ記事では、OpticStudio でレーザービーム伝搬をモデリングする際の重要なステップをご紹介しています。OpticStudio のシーケンシャルモードで、どのようなツールが利用可能か、設定方法、レーザービーム伝搬の解析、シンプルなシングレットレンズシステムで最小ビームサイズに最適化する方法についてご紹介します。

OpticStudio のシーケンシャル モードには、ガウス ビームの伝搬をモデル化するために、 3 つのツールがあります。

  • 光線ベースの手法では、幾何光学的光線追跡によってビームの伝搬をモデル化します。

  • 近軸ガウシアン ビームは、ガウス ビームをモデル化し、近軸光学系を通して伝搬させて、ビームのサイズやウェスト位置をはじめとする各種ビーム データを表示します。

  • 物理光学伝搬法(POP)は、レーザー光をコヒーレントな波面の伝搬でモデル化し、任意のコヒーレント光学ビームを極めて詳細に検討できます。

このブログ記事では、近軸ガウシアン ビーム解析ツールについて紹介します。最小のレーザービームサイズに最適化するための解析のセットアップ方法を紹介します。

近軸ガウシアン ビーム解析

近軸ガウシアン ビーム解析は、ガウス ビームの特性を手早く計算する「電卓」のような対話型機能です。特定の入力ビームがレンズ光学系を伝搬する場合の、理想ガウス ビームと混合モードのガウス ビームのデータを計算します。初期入力の埋め込みビームの特性とその M2 値を定義する必要があります。この機能の利点は、理想的なガウス ビームと混合モード (M2 > 1) のガウス ビームの両方を入力でき、光学系を伝搬するビームのデータを面ごとに表示できることです。この方法の制約は、ガウス ビーム パラメータの計算が近軸光線データに基づいていることから、収差の大きな光学系や非回転対称光学系など、近軸光学では記述できない光学系において結果が不正確になる可能性があることです。

  • 入力の埋め込みビームは、波長、ウェスト サイズ (半径)、ウェスト位置 (光学系の面 1 からウェストまでの距離) によって指定します。

  • M2 係数。理想的な M2 値は 1 ですが、実際のレーザーの M2 値は必ず 1 より大きくなります。

    この埋め込みビームがレンズ光学系を通じて伝搬すると、ビーム サイズ、ビーム発散、ウェスト位置など、各面におけるビームのデータが計算されて出力ウィンドウに表示されます。X 方向と Y 方向の両方についてガウス ビーム パラメータが計算されます。

    第 1 部と同じ課題、つまりシングレット レンズを使用したレーザー ビームの合焦光学系の設計に取り組みます。

    仕様も第 1 部と同じです。

      • 公称波長 = 355 nm

      • レーザー出力から 5 mm の位置での測定値 :

        • ビーム直径 = 2 mm

        • 発散角 = 9 mrad

         波長と遠視野の発散角が既知であることから、式 (1) ~ (3) を使用して、ビーム ウェストが 0.0125 mm、レイリー範囲が 1.383 mm と計算できます。この光学系を近軸ガウシアン ビーム解析ツールを使用してモデル化し、レーザー出力から 100 mm 離れた位置でビーム スポットが最小になるようにします。

        最初の光学系は、光線ベースの手法の場合に非常に似ています。唯一の違いは、近軸ガウシアン ビーム解析ではビームを物体面 0 (OBJECT) から発射できないということです。したがって、物体面の後にダミー面を挿入する必要があります。物体面の厚みを 0 に設定することでダミー面を物体と同じ位置に配置し、ビームはこのダミー面から発射します。はじめにダミー面の厚みとして 100 mm を入力し、これを最適化の変数に設定します。ビームの発散角ではなく、ビーム サイズに着目します。

        オペランド GBPS は、近軸ガウシアン ビーム解析ツールで計算される近軸ガウシアン ビーム サイズを返します。メリット ファンクション エディタで、次の図のように GBPS の行を入力します。現在の絞り面 (STOP) におけるビーム サイズ (半径) は 0.949 mm です。

        面 3 におけるビーム半径の目標値は、測定データから 1 mm とする必要があります。これは、ビームの発射位置 (面 1) とレーザー出力 (面 2) の間隔に対する最初の推定値 100 mm が外れていることを示唆します。最適化によって、OpticStudio は最適のビーム発射位置を見つけることができ、絞り面 3 で測定したビーム直径が 2 mm になります。

        クイック最適化を経て、OpticStudio はレーザー出力の面 2 の左 105.611 mm という新しいビーム発射位置を見つけます。これが、新しいビーム発射位置です。ビーム ウェスト位置を見つけるために光線ベースの手法を使用した前号では、レーザー出力の前 106.108 mm という値が返されたことを覚えているでしょう。2 つの解析ツールでは使われている計算方法が異なるため、このようなわずかな差異は想定内です。

        次に、シングレット レンズを最適化して、レーザー出力から 100 mm の位置におけるビーム サイズが最小になるようにビームを合焦させます。

        • レンズ面の曲率半径を変数に設定します。

        • 像面における近軸ガウシアン ビーム サイズを返すように、メリット ファンクション エディタで GBPS オペランドのパラメータを変更します。Surf を像面に対応する 6 に設定します。[目標] (Target) を 0 に設定して、ビーム半径の最小化を目指します。[重み] (Weight) を 1.0 に設定します。

        • 像面における現在のビーム サイズは、1.849 mm と計算されます。

           最適化後、近軸ガウシアン ビームの最小サイズは 9.369 µm と計算されます (これはウェストにおける合焦されたビーム サイズとして、本シリーズの第 1 部のスポット ダイアグラムで計算した幾何光学的光線追跡による値よりも正確です)。

          近軸ガウシアン ビーム解析は、ガウス ビームの特性を手早く計算する「電卓」のような対話型機能です。理想的なガウス ビームと混合モード (M2 > 1) のガウス ビームの両方を入力でき、光学系を伝搬するビームのデータを面ごとに表示できます。この方法の制約は、ガウス ビーム パラメータの計算が近軸光線データに基づいていることから、収差の大きな光学系や非回転対称光学系など、近軸光学では記述できない光学系において結果が不正確になる可能性があることです。また、アパチャーをすべて無視し、伝搬するガウス ビームは光学系内のすべてのレンズのアパチャーの十分内側を通過すると仮定しています。

          この記事の全文、および、ダウンロード可能なサンプルファイルは、こちらからご覧いただけます。

          このブログシリーズの第一回を見逃した方は、こちらをご覧ください。物理光学伝搬を利用したレーザービームのモデル化については、次回のブログでご紹介します。

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          著者
          Hui Chen
          Senior Optical Engineer
          Zemax an Ansys Company