2022年5月11日

OpticStudio でレーザー ビームの伝搬をモデル化する方法 : 第 3 部 - 物理光学伝搬によるガウス ビームのモデル化

Category: Product News

このブログ記事では、OpticStudio でレーザービーム伝搬をモデリングする際の重要なステップをご紹介しています。OpticStudio のシーケンシャルモードで、どのようなツールが利用可能か、設定方法、レーザービーム伝搬の解析、シンプルなシングレットレンズシステムで最小ビームサイズに最適化する方法についてご紹介します。

OpticStudio のシーケンシャル モードには、ガウス ビームの伝搬をモデル化するために、 3 つのツールがあります。

  • 光線ベースの手法では、幾何光学的光線追跡によってビームの伝搬をモデル化します。

  • 近軸ガウシアン ビームは、ガウス ビームをモデル化し、近軸光学系を通して伝搬させて、ビームのサイズやウェスト位置をはじめとする各種ビーム データを表示します。

  • 物理光学伝搬法(POP)は、レーザー光をコヒーレントな波面の伝搬でモデル化し、任意のコヒーレント光学ビームを極めて詳細に検討できます。

このブログでは、物理光学伝搬法(POP)ツールについて紹介します。POP を設定し、レーザービームの最適な焦点を見つけるために使用する方法について説明します。

物理光学伝搬法(POP)

ビームは、離散的にサンプリングした点の配列として表現されます。これは、幾何光学解析における光線を使用した離散サンプリングによく似ています。配列全体が各光学面の間にある自由空間を通じて伝搬します。それぞれの光学面で、その片側からもう一方の側にビームを伝達するための伝達関数を計算します。ビームは配列内に複素数値による電界として完全に記述されるため、任意のコヒーレントな光学ビームを極めて詳細に検討できます。ガウス ビームやあらゆる形態の (ユーザー定義可能) より高次のマルチモード レーザー ビームなど、任意のコヒーレントな光学ビーム、または焦点から離れた位置の回折効果や空間フィルタリングのような有限のレンズ アパチャーによる効果を極めて詳細に検討できます。この記事では、物理光学伝搬ツールの使用法の詳細には立ち入りません。3 つのナレッジベース記事からなるシリーズ『物理光学伝搬 (POP) の使用法 : 1 - ビームの検査』に掲載された、このツールに関する詳細を読むことを推奨します。

Example

第 1 部および第 2 部と同じ課題、つまりレーザー出力から 100 mm の位置にあるシングレット レンズを使用したレーザー ビームの合焦光学系の設計に取り組みます。

    仕様も同じです。

    • 公称波長 = 355 nm

    • レーザー出力から 5 mm の位置での測定値 :

      • ビーム直径 = 2 mm

      • 発散角 = 9 mrad

    ガウス ビームの波長と遠視野の発散角が既知であることから、ビーム ウェストが 0.0125 mm、レイリー範囲が 1.383 mm と計算できます。

    この解析は、以前に光線ベースの手法で使用したものと同じサンプル ファイル "1_rays optimized.zar" から始めます。物体面の後に新しい面を挿入し、物体面の厚みを 0 にして、当初の厚み 106.108 mm は面 1 の厚みに移動します。

    POPツールを設定します。

    • [物理光学伝搬] (Physical Optics Propagation) → [設定] (Settings) → [全般] (General) タブで [開始面] (Start Surface) を 面 1、[終了面] (End Surface) を面 6 に設定します。

    • [物理光学伝搬] (Physical Optics Propagation) → [設定] (Settings) → [ビーム定義] (Beam Definition) タブで、[ビーム タイプ] (Beam Type) を [ガウス ウェスト] (Gaussian Waist)、[X/Y サンプリング] (X/Y Sampling) を 256 x 256、[ウェスト X/Y] (Waist X/Y) を 0.0125 mm に設定したら、[自動] (Automatic) ボタンをクリックして、OpticStudio にビームのサンプリングに適した配列サイズを計算させます。

    設定が完了したら、ダイアログ下部の [保存] (Save) ボタンをクリックします。現在の設定がすべて設定ファイルに保存され、それらの同じ設定がメリット ファンクション エディタに配置された POPD オペランドの計算に使用されます。   

    既存のオペランドはメリット関数からクリアされ、POPDオペランドが追加され、面3でのビームXの半値幅またはビームサイズが返さ

    れます。これは、ビームサイズが測定されたサイズ1mmと一致しなければならない場所です。メリット ファンクション エディタを更新すると、POPD オペランドは面 3 のビーム半径として 1.0037 mm を返します。測定されたビーム サイズの 1 mm に厳密には一致していません。

     これは、ガウス ビームのウェスト位置が若干ずれていることを意味します。面 3 のビーム半径を 1 mm にするために、行 2 の POPD オペランドの [重み] (Weight) に 1、[ターゲット] (Target) に 1 mm を割り当てたうえで、面 1 の厚みを最適化変数に設定します。最適化により、面 1 の厚みは 105.689 mm に変更され、面 3 の POP ビーム サイズが正確に 1 mm になりました。さらに、メリット ファンクション エディタの行 4 と 6 に 2 つのオペランド GBPS と POPD を追加しました。これらは、像面における近軸ガウス ビームのサイズと、POP ビームのサイズを返します。近軸ガウス ビーム サイズは 9.97 um、POP ビーム サイズは 9.811 um が返されます。

    さらに最適化を続け、この値が、レーザー出力から 100 mm の位置のシングレット レンズで達成できる本当に最小のビーム サイズであるのかどうかを確認できます。レ面 1 の厚みを固定し、シングレットの前面と後面の曲率半径に変数ソルブを追加します。次に、行 6 の POPD オペランドの [ターゲット] (Target) に 0、[重み] (Weight) に 1 を割り当てます。これは、像面の POP ビーム サイズを最小にする最適化を行うためです。

     最適化後、POPD は若干小さいビーム半径 9.48 um を返します。POP で計算したスポット サイズ 9.48 um は、近軸ガウス ビームで計算したスポット サイズ 9.45 um に極めてよく一致しています。

    OpticStudio でガウシアンビーム伝搬の異なる方法を使用する場合の比較とサンプルファイルのダウンロードは、この記事の全文をご覧ください。Part 3 - 物理光学伝搬を使用したガウシアンビームモデリング - ナレッジベース (zemax.com)

    OpticStudio でのレーザービーム伝搬のモデリング方法に関する過去のブログ記事はこちら

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    著者:
    Hui Chen
    Senior Optical Engineer
    Zemax an Ansys Company