2022年2月24日
Zemax OpticStudio STAR モジュール: Ansys 用データエクスポート拡張機能

このブログ記事では、Zemax のカスタムの拡張機能を使用して Ansys Mechanical から FEA の結果をエクスポートする方法について説明します。この拡張機能(リクエストに応じてダウンロード可能)はエクスポートプロセスの合理化に役立ちます。つまり、それぞれのFEAデータが正しく命名・フォーマットされ、STAR モジュールを介して OpticStudio に直ちにインポートされるようになります。また、FEA データセットの状況や、光学設計内のどの面にそれらのデータセットを割り当てるべきかについても常に把握しておきやすくなります。この拡張機能は、構造データセットと熱データセットの両方に対応しています。
OpticStudio STAR モジュールでは、ユーザが FEA データを OpticStudio にロードして、設計の光学性能に対する影響を評価することができるので、STOP分析のワークフローが合理化されます。どの FEA データセットをどの光学面に割り当てるかを常に把握することは、光学性能を正確にモデル化するうえで欠かすことができません。多数の光学要素や光学面がある中で、個々の FEA データセットを適切に命名するのは大変です。時間ばかりかかって、すぐに作業が滞ってしまう可能性があります。
Ansys ACT API を使用すれば、ユーザによる拡張機能の作成と、それらのワークフローの自動化が容易になります。一貫性のある命名体系を使用して FEA データセットを保存できれば、スクリプトの作成が処理速度の向上と人的エラーの削減に役立つ可能性があることを示す理想的な例となります。
STAR モジュールの開発時に、Ansys Mechanical FEA プラットフォームに対応する拡張機能の開発に取りかかりました。私たちが構築したのは、面の名前、FEA データのタイプ、基準座標系を常に把握しておくのに役立つ、Ansys のユーザ拡張機能です。この拡張機能を使用した結果、テストプロセス時に発生したミスの数が減少しました。この拡張機能は、STOP 分析のワークフローをさらに合理化するためのもので、お客様はこの機能を Ansys Mechanical で使用することで、FEA データを OpticStudio STAR モジュールにエクスポートできます。
ここで提供される拡張機能は Ansys Mechanical 用ですが、STARモジュールはあらゆる FEA パッケージの FEA データに対応します。この拡張機能は、Ansys Workbench での言語設定(英語)を使用して開発およびテストされています。Ansys Workbench で他の言語設定を使用すると、問題が発生する可能性があります(また、Ansys の解析名と、エクスポートされるファイルのフォルダ名は英数字で指定する必要があります)。
概要
この拡張機能は面のデフォーメーションと、体積・温度のプロファイルを読み込み、Ansys Workbench のプロジェクトディレクトリの user_files フォルダ内にある別フォルダに、出力データセットを .txt ファイルとして作成します。列はタブで区切られ、ノード位置の後にデフォーメーションまたは温度が記述されます。結果は、任意の解析/結果の評価とともにエクスポートされます。

この拡張機能は、温度プロファイルがインポートされている場合の構造解析での使用を意図しています。このタイプの解析で使用する場合、同じ解析からデフォーメーションと温度の両方をエクスポートできます。温度プロファイルが割り当てられていない場合は、一定の体積温度がエクスポートされます。現在は、環境設定に基づいて一定の温度が含まれています。拡張機能を熱解析で使用することは可能ですが、提供されるのは温度ファイルだけとなります。
解析タイプ |
ミラーのエクスポート |
レンズのエクスポート |
静的構造解析 |
完全にサポート |
完全にサポート |
非定常構造解析 |
完全にサポート |
完全にサポート |
座屈固有値解析 |
完全にサポート |
完全にサポート |
陽解法動解析 |
サポート対象外 |
サポート対象外 |
調和応答解析 |
完全にサポート |
完全にサポート |
モーダル解析 |
完全にサポート |
定義済みのタイムスタンプの場合のみ |
ランダム振動解析 |
完全にサポート |
定義済みのタイムスタンプの場合のみ |
応答スペクトル解析 |
完全にサポート |
完全にサポート |
剛体運動解析 |
サポート対象外 |
サポート対象外 |
トポロジー最適化解析 |
サポート対象外 |
サポート対象外 |
定常熱解析 |
サポート対象外 |
温度エクスポートのみ |
非定常熱伝導解析 |
サポート対象外 |
温度エクスポートのみ |
Export to STAR拡張機能をAnsysにインストールする
Ansys Workbench環境で、ワークベンチメニューにある [ACT開始ページ] をクリックします。

In the ACT Start Page, click Manage Extensions.

Extension Managerの右上隅にある [+] をクリックして、新しい拡張機能をインストールします。

エクスプローラーウィンドウで Export to STAR.wbex ファイルを指定し、[開く] をクリックします。

エラーメッセージが表示される場合は、以下の操作を実行します。

Windows の地域設定を「英語(米国)」に切り替えた後に Workbench を再起動します。さらに、[ACT開始ページ] をクリックし、もう一度開始します。

拡張機能がインストールされたら、Extension Manager 内で対象の拡張機能をクリックしてロードします。拡張機能が緑色で強調表示されます。

[ACT開始ページ] を閉じてWorkbench プロジェクトに戻ります。

これで、拡張機能 Export to STAR が Ansys にインストールされました。
Ansys 用拡張機能 Export to STAR を使用する
拡張機能を問題なくインストールできれば、[Ansys Mechanical] ウィンドウの上部にあるリボンに [Export to STAR] タブが表示されます。

そこには 2 つの異なるエクスポートボタンがあります。
-
[ミラーデータをエクスポート] では、単一の面のデフォーメーションデータが取得されます。この機能は、熱解析では非アクティブになります。
-
[レンズデータをエクスポート] には、解析タイプに応じた 2 つの異なる機能があります。
- 構造解析では、Export Lens to STAR オブジェクトが結果に挿入され、2 つの面のデフォーメーションデータと、選択した体積の熱データが取得されます。
- 熱解析では、Export Temperature to STAR オブジェクトが結果に挿入され、選択した体積の熱データだけが取得されます。
以下のセクションでは、Export Lens to STAR 機能についてのみ説明します。それによって、Export Mirror to STAR と Export Temperature to STAR のすべてのオプションが網羅されることになるからです。
グラフィックスツールバーでボディモードを有効にします。
グラフィックス領域で、データのエクスポート元の光学部品のボディを選択します。このステップは重要です。このステップを省略すると、アセンブリ全体の温度データがエクスポートされます。

リボンの [Export to STAR] タブで、[レンズデータをエクスポート] をクリックします。

Export Lens to STAR エントリがソリューションタブに挿入されたら、部品の前面を選択し、[前面]/[配置と形状] に適用します。
そのために、まず [配置と形状] の横にある黄色のボックスをクリックします。

次に、グラフィックス領域でレンズの前面をクリックし、[適用] をクリックします。

レンズ裏面にも、ここまでのステップを繰り返します。
OpticStudio のレンズデータエディタで面の行番号を使用して、[前面のZemax ID] を定義します。

[前面座標系] を定義します(グローバル座標を使用する場合は、すべてに対して同一の座標系を選択)。

プロセスを繰り返し、裏面の情報を定義します。
目的のタイムステップを定義します。
-
[すべてのタイムステップ] – 複数のフォルダが作成されます。
-
[タイムステップを定義] – タイムステップの範囲を選択します。
[定義済みのタイムステップ] を選択した場合、適切なタイムステップの定義を選択します。

データのエクスポート元のタイムステップを入力します。

すべてのエントリがソリューションタブに追加されたら、[すべての結果を評価] をクリックしてエクスポートを開始します。

Ansys Workbench のプロジェクトディレクトリの user_files フォルダ内に、選択した各面および体積に対応する .txt ファイルが作成されます。FEA データを OpticStudio の STAR モジュールにロードする準備ができました。
まとめとしては、FEA データをエクスポートするプロセスを合理化することで、光学設計チームと機械設計チームが協力し、STAR モジュールを介して OpticStudio 内での STOP 分析を実行できるようになります。この拡張機能によって、どのようなデータセットがあり、それらのデータセットがどの光学面に割り当てられているのかを常に把握しておきやすくなります。また、Ansys FEA データのエクスポートおよび STAR FEA データのロードに費やす労力が軽減されるうえ、プロセスでの人的エラーの解消と、STAR ワークフローの全体的な効率の向上も促進されます。
OpticStudioは業界標準となっている光学設計ソフトウェアです。無料体験版をぜひお試しください。
著者:
Esteban Carbajal
シニアプロダクトマネージャー
Zemax an Ansys Company
Matthias Schlich
FEAエンジニア
Zemax an Ansys Company