2022年6月29日

OpticsBuilderを使用したコスト削減への着手と光学設計の迅速な市場投入:OpticsBuilder向け準備

Category: Product News

このブログ記事では、OpticStudio 20.1以降にあるOpticsBuilder向け準備ツールの概要全般について説明します。OpticsBuilder向け準備ツールは、OpticStudioのレンズファイル (.ZMX、.ZAR、.ZOSの各ファイル) をOpticsBuilder用の形式 (ZBDファイル) に変換します。これにより光学エンジニアは、OpticsBuilderがサポートするCADプログラム内から簡単にアクセスできるフォーマットで設計をパッケージ化できます。

概要

OpticsBuilder向け準備ツールを使用すると、OpticStudioモデルからOpticsBuilder (ZBD) ファイルに簡単に変換できるので、光学エンジニアと機械エンジニアとの間のハンドオフが効率化します。変換プロセスは簡単です。ユーザー入力、図面入力、.ZBDファイルの保存の3ステップです。

OpticsBuilder向け準備ツールの概要

OpticsBuilder向け準備ツールは、OpticStudioの[ファイル] → [変換]セクションにあります。

ヒント:[OpticsBuilder向け準備 (] (Prepare for OpticsBuilder) ボタンが表示されない場合は、OpticStudio 20.1以降にアップグレードする必要があります。

OpticsBuilder向け準備ツールには、変換プロセスの各手順に対応する3つの設定タブがあります。[ユーザー入力 (] (User Inputs) タブでは、光学エンジニアが解析環境を設定できるほか、OpticsBuilderの光線追跡結果を比較する際にスポットサイズ、光線のケラレ、画像のコンタミの許容デルタを定義できます。スポットサイズの許容デルタは、シーケンシャルモデルからノンシーケンシャルモデルへの正常に変換において許容されるスポットサイズの最大変化量でもあります。詳細については、「エラー1:スポットサイズが一致しません (Spot sizes do not match) 」のセクションを参照してください。[図面入力 (] (Drawing Inputs) タブでは、OpticsBuilderでISO 10110準拠の光学図面を自動生成するために必要な情報を取り込むことができます。最後に、[.ZBDファイルの保存 (] (Save .ZBD File) タブでCADユーザー向けのメッセージを入力し、変換したファイルを、更新した解析設定とともに保存できます。

OpticsBuilder 向け準備ツールには、以下の機能があります。

  • シーケンシャルモードからノンシーケンシャルモードにファイルを変換する。この変換のために、OpticsBuilder向け準備ツールでは以下の処理が実行されます。

    • シーケンシャル面を、それに相当するノンシーケンシャル形状オブジェクトに変換する。

    • 変換後の光線の位置が正しいことを検証する。

    • 変換後の光線の角度が正しいことを検証する。

    • 変換後のスポットサイズの変化が、許容値の範囲に収まっていることを確認する。

    • シーケンシャルモードから適切に変換できなかった場合、ノンシーケンシャルファイルを開いて確認できるようにする。

  • 得られたノンシーケンシャルオブジェクトがOpticsBuilderでサポートされていて、エクスポートできることを確認する。

  • シーケンシャル設計の静的クリティカル境界光線セットを生成する。

  • シングレット、貼り合わせ式のダブレット、トリプレット、クアドロプレットの図面データを手動で入力できるようにする。

  • 他のエンジニアが参照できるコメントを.ZBDファイルに追加する。

  • 動的光線追跡解析で、散乱または光線の分割を有効にするかどうかを選択する。

  • OpticsBuilderで主光線を生成するためのアパチャーを定義する。

  • 設計の受容基準として、OpticsBuilderに許容デルタを追加する。

上記の手順を実行するために、OpticsBuilder向け準備ツールは初期ファイルのコピーを作成します。続いて、ファイルがシーケンシャルである場合、デザインの固定ツールが実行されて静的なクリティカル光線セットが生成され、ノンシーケンシャル変換が適用されます。これは、NSCグループに変換ツールで使用されるプロセスと同様のプロセスです。これらの各手順の詳細については、ヘルプシステムのファイル「[公差 (] (Tolerance) タブ → [製造ツール (] (Production Tools) グループ → [デザインの固定 (] (Design Lockdown) 」、「[公差 (] (Tolerance) タブ → [製造ツール (] (Production Tools) グループ → [クリティカル光線セットの生成 (] (Critical Rayset Generator) 」、および「[ファイル (] (File) タブ → [変換 (] (Convert) グループ → [NSCグループに変換 (] (Convert to NSC Group) 」を参照してください。

完了すると、2つのファイルが比較されます。まず、回転およびオフセットのマトリックスが抽出されて比較されます。続いて、ノンシーケンシャルファイルで、一度に1つの視野ずつ光線追跡が実行されます。ディテクタデータが保存され、幾何光学的像解析ツールから得られたシーケンシャルファイルのスポットサイズデータと比較されます。ツールの設定は次のようになります。

視野ごとにループ処理が実行されます。各視野におけるピクセルサイズは、ノンシーケンシャルモデルのディテクタ上でX方向のピクセル数として求められます。像サイズは、ディテクタ上で像が占めるX半幅を2倍することで求められます。

最後に、静的なクリティカル光線セットがノンシーケンシャルファイルに読み込まれ、光線が到達した座標がディテクタから読み込まれます。これらの座標が元のシーケンシャルファイルと比較され、変化があれば、[ユーザー入力 (] (User Inputs) ダイアログでユーザーが入力した設定と比較されます。

ファイルがノンシーケンシャルである場合、OpticsBuilder向け準備ツールは互換性のないオブジェクトがないかどうかチェックし、光線追跡を実行して初期ファイルとコピーファイルを比較します。光線追跡は保存され、ディテクタの位置を特定するために光路解析が実行されます。

OpticsBuilder向け準備ツールでは、フォーカル光学系とアフォーカル光学系の両方を扱うことができます。

OpticsBuilder向け準備ツールの使用手順

OpticsBuilder向け準備ツールには、シーケンシャルモードでもノンシーケンシャルモードでもアクセスできます。このツールを使用するには、共有したいファイルを開き、[ファイル] → [OpticsBuilder向け準備 (] (Prepare for OpticsBuilder) に移動します。[ユーザー入力 (] (User Inputs) タブが表示されます。この時点で以下の操作を行います。

    1. 現在のところ、ZBDファイルを読み込むことができるCADソフトウェアはCreoだけです。[読み取り専用]チェックボックスをチェックしていると、OpticsBuilderでは光学データを編集できませんが、CADツールを使用すれば変更できます。クリティカル光線の位置と角度の変化量に対する許容値を選択できます。[位置公差]は、元のファイルにある光線の到達位置と、コピーしたファイルにある到達位置との差に対する最大許容値を表します。[角度公差]は、目標とする光線ベクトルと実際の光線ベクトルが成す角度に対する最大許容値を表します。ファイルがシーケンシャルである場合は、 Convert STOP Surface to Hard Apertureチェックボックスをチェックすると、絞り面をCAD環境で環状オブジェクトとして使用できます。ファイルがノンシーケンシャルである場合は、[瞳の定義]ドロップダウンメニューから[絞り面 / オブジェクト]を選択する必要があります。
    2. 準備プロセスで使用する解析光線数を選択し (ファイルがシーケンシャルである場合) 、解析環境設定と許容デルタを選択します。ここで、光線追跡において散乱や光線の分割を考慮するかどうかを選択できます。さらに、ファイル形式の変更後に像平面で許容される変化量を定義することもできます。特に、「スポットサイズ」の許容デルタを使用すると、ファイルをシーケンシャルモードからノンシーケンシャルモードに変換したときに発生する場合があるスポットサイズの変化の許容量を定義できます。  

    3. [準備 (] (Prepare) をクリックします。この時点で、ファイルが解析され、エラーや無効なオブジェクトタイプがないことが確認されます。シーケンシャル設計から作業を開始した場合は、この手順で設計をノンシーケンシャル設計に変換し、OpticsBuilderで使用できるようにします。ようにします。

    ZBDファイルが正常に作成されたら、[次へ]をクリックして[図面入力 (] (Drawing Inputs) タブに進みます。ZBDファイルが正常に作成されなかった場合は、エラーメッセージが表示され、プロセスが失敗した理由と、ユーザーが取り得る問題解決手順が示されます。

    [図面入力 (] (Drawing Inputs) タブでは、ISO 10110準拠の光学製造図面をCADプラットフォームで自動生成するための図面データをユーザーが入力することができます。OpticsBuilderユーザーは、この情報と、CAD用の独自のカスタム図面テンプレートとのマップを設定することもできます。これにより、OpticsBuilderで図面機能を使用する際に毎回、その情報を自身のテンプレートに自動入力できます。

    ZBDファイルが正常に作成されたら、[次へ]をクリックして[図面入力 (] (Drawing Inputs) タブに進みます。ZBDファイルが正常に作成されなかった場合は、エラーメッセージが表示され、プロセスが失敗した理由と、ユーザーが取り得る問題解決手順が示されます。

    [図面入力 (] (Drawing Inputs) タブでは、ISO 10110準拠の光学製造図面をCADプラットフォームで自動生成するための図面データをユーザーが入力することができます。OpticsBuilderユーザーは、この情報と、CAD用の独自のカスタム図面テンプレートとのマップを設定することもできます。これにより、OpticsBuilderで図面機能を使用する際に毎回、その情報を自身のテンプレートに自動入力できます。

    レンズ面の各ペアが、画面上部のラベル付きタブに表示されます。選択したエレメントタイプがシングレット以外の場合、貼り合わせのプロパティを指定するタブが作成されます。エレメントの名前が、そのタブの名前になります。

    シーケンシャルモデルの場合、以下の情報が[図面入力 (] (Drawing Inputs) タブに自動入力されます。

    • 前面と後面の曲率半径

    • 前面と後面のクリアアパチャー

    • レンズ材質

    • 屈折率

    • アッベ数

    • 中心厚さ

    • 参照波長

    このデータは、レンズデータエディタと公差解析データエディタから取得されます。その他のデータフィールドは、手作業で入力する必要があります。[図面入力 (] (Drawing Inputs) タブのすべてのデータは、この手順で編集できます。

    ノンシーケンシャルモデルの場合、以下の情報が[図面入力 (] (Drawing Inputs) タブに自動入力されます。
    • レンズ材質

    図面データを入力したら、[次へ]を選択して[.ZBDファイルを保存 (] (Save .ZBD File) タブに進み、注釈を入力します。これらの注釈は生成したファイルに添付され、ファイルをインポートするとCADユーザーが参照できます。ZBDファイルを作成する準備ができたら、[保存]をクリックします。

    ZBDファイル形式

    OpticsBuilderで使用されるZBDファイル形式は、反復的な光学機械パッケージング解析に必要なすべての情報を保存することを目的としています。したがって、OpticStudioとサポートされているCADプログラムとの間で簡単に情報を相互に交換できます。このファイルタイプは、OpticsBuilderおよびOpticStudio 20.1以降で開くことができます。ZBDファイルには以下の情報が含まれます。

    • シーケンシャルモデル (該当する場合)
    • ノンシーケンシャルモデル
    • OpticStudioによる光線追跡のベースライン結果
    • 静的クリティカル光束 (シーケンシャルモデルのみ)
    • 材料のプロパティ
    • RMSスポットサイズ、光線のケラレ、および画像のコンタミの許容デルタ
    • 光学図面情報
    • 光学公差解析値
    • エクスポートされたすべての機械CADパート

    ZBDファイルをOpticStudioで開く際に、元のシーケンシャル設計を開くか、それともOpticsBuilderからエクスポートしたノンシーケンシャルモデルと追加の機械部品を含むZARを開くかを選択できます。設計が元々ノンシーケンシャルモードであり、シーケンシャルモデルが存在しない場合は、ノンシーケンシャルZARが自動的に開きます。

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    OpticsBuilderの機能をご自身でお試しいただけます。無料トライアル版はこちらからダウンロードできます。

    著者:
    Jacob Hart
    Alexandra Culler (Zemaxのグループ会社であるAnsysのシニアアプリケーションエンジニア)