2022年8月11日

高出力レーザー光学系のSTOP分析 - 第 1 部

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高出力レーザーは、レーザー溶断、溶接、ドリルなど、さまざまな用途に広く使われています。光学系によるレーザー光吸収の効果は無視できません。このような光学系の性能は、高出力レーザーからの熱によって劣化します。その原因は、レンズ材料によるバルク吸収か、コーティングによる表面吸収のいずれかです。安定した焦点距離とレーザー ビームのサイズと品質を保証するには、こうした熱の効果をモデル化する必要があります。5 つの記事からなる本シリーズでは、レーザーによる加熱の効果をシミュレートします。レンズ材料の温度上昇による屈折率の変化や、機械的応力や熱弾性効果によって生じる構造的な変位の効果を検討します。

レーザーによる熱効果

従来、OpticStudio では熱効果を [熱解析の設定] (Make Thermal) ツールを使用してモデル化してきました。このツールは、温度を変えた複数の設計コンフィグレーションを設定して、熱による性能の変動を解析できるようにします。しかし、[熱解析の設定] (Make Thermal) ツールには、いくつかの制約があります。第 1 に、指定する温度は、部品全体で均一であると仮定しています。第 2 に、熱膨張/収縮を材料の熱膨張係数 (CTE) のみに基づく線形の関数で計算します。これは、光学系内の温度勾配分布によって発生する性能劣化を考慮していない、かなり簡素化した手法です。さらに、光学系が変形した後の正確な形状をシミュレートする能力もありません。構造の変位は単に、加熱によって曲率半径が一様に平坦化 (増加) するものと近似しています。

OpticStudio の STAR モジュールを使用すれば、こうした制約にすべて対応できます。このモジュールは、有限要素解析 (FEA) の結果を、他とは比べものにならない簡単さと正確さで、OpticStudio に直接組み込む新機能を備えています。これによって、レーザー加熱による熱および構造変位の双方がもたらす影響を、より包括的に検討できます。

光学ツールの Ansys Zemax スイートの組み合わせによって、光学系およびオプトメカ系の設計ワークフローに、はじめて FEA データをシームレスに統合できるようになりました。

  • 高出力レーザー光学系を設計および最適化します。

  • CAD プラットフォーム内で光学設計を簡単に共有しオプトメカの筐体やマウントなどを解析します。

  • FEA パッケージとの統合により光学性能に対する構造的および熱的影響を詳細に評価します。

  • 光学系部品と機械部品によって吸収されるパワーを解析します。

光学系の設定

この光学系は、レーザー ビームを極めて高い精度で制御しながら加工物に供給する必要がありますが、OpticStudio はそうした光学系の設計を最適化するために必要となるすべてのツールを備えています。この例の合焦用レンズには、スキャンによって移動するさまざまな場所で、焦点を安定して極めて小さく絞り込んだ、したがって高いレーザー パワーが得られる、F シータ (Fθ) レンズを使用しています。レンズは 3 つの合焦用レンズと像面の前の保護窓から構成されます。

下図の光学系は、業界で一般的に使われているものです。2 つのスキャン ミラー、3 つの合焦用レンズのセット、像面の前の保護窓から構成されます。レーザーが加工面のさまざまな場所を確実にスキャンできるように、2 つのミラーは異なる方向に回転します。

この記事で取り上げる例では、同様の光学系を使用しますが、折り返しミラーを 1 つだけ使用します。合焦用レンズは F シータ レンズです。スキャン中、像面上のさまざまな位置で小さく絞り込んだ焦点が得られ、その結果高いレーザー パワーを供給できるようにします。F シータ レンズは、f-θ ディストーションが小さくなるように設計されているため、レーザーを一定のスピードでスキャンしたときに比較的大きな像面上で、線形の変位が得られます。

光学系は、最初に波長 1064 nm で設計します。有効焦点距離は 100 mm です。スキャン角は 2.5 度です。メリット ファンクション エディタで、ガラスと空気の厚み両方に適切な境界条件となる制約を追加し、瞳積分を 4 リング、6 アームのガウシアン求積法に設定します。この設定は、記事に添付された初期ファイル starting point.zar に含まれています。

つづいて、妥当なスポット サイズが得られるまで、光学系に対してグローバル最適化を実行します。視野に対する RMS 解析から、光学系の性能が回折限界に達していることがわかります。これは、OpticStudio のグローバル検索アルゴリズムによって見つかる、多数の設計バリアントの 1 つに過ぎません。

さらなる解析の準備

 ここでは、この後の設計と解析に備えて、最適化が完了した最終光学系を若干調整します。この光学系は、軸上でしか使用しないため、視野点は 0 度を除いてすべて削除します。X ティルトが -90 度の折り返しミラーをレンズの前、40 mm の位置に追加し、これを光学系の絞りに設定します。入射瞳径を 18 mm に減らし、すべての光学エレメントに固定半径 12.7 mm (直径 25.4 mm) を割り当てます。

ミラー面 4 の [面のプロパティ] (Surface Properties) → [描画] (Draw) タブを開き、[厚み] (Thickness) を 2.65 mm に設定します。この設定は、シーケンシャル モードの [レイアウト] (Layout) ウィンドウの描画に影響するだけでなく、光学系をノンシーケンシャル モードに変換する際のミラーの厚みを定義します。

レンズの温度変化を考慮しなければ、この光学系は一定の焦点深度内で安定して合焦します。これは、[像質] (Image Quality) → [RMS] (RMS) → [焦点位置に対する RMS] (RMS vs. Focus) の解析で確認できます。

シーケンシャル設計は、以上で完成です。参考として、ここまでの設定をファイル Lens-3P_D25.4_2022.zar として記事に添付しました。

これで、光学系を設定し、光学性能を最適化することができました。次のステップは、CAD パッケージへのエクスポートとハウジングのオプトメカニカル設計のためのシステムを準備することです。

これは、5 つのパートからなるシリーズの最初の記事です。その他の記事はナレッジベースでご覧いただけます。

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著者

Julia Zhang, Senior Application Engineer, Ansys

Hui Chen, Senior Application Engineer, Ansys

Steven La Cava, Senior Application Engineer, Ansys

Chris Normanshire, Lead Application Engineer, Ansys