2021年6月17日

有効焦点距離とディストー
ション焦点距離の違いについて

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多くの光学定義において、焦点距離は比較的使われる数値です。ただし、計算によって、求める焦点距離の定義が変わる事を注意しなければいけません。この記事では、近軸の焦点距離の計算の違いを、有効焦点距離とディストーション焦点距離で説明します。

ディストーション (歪曲) 収差とは、光の実際の焦点が「期待される」焦点位置と一致しないことです。 では、「期待」とは何を意味するのでしょうか。 ほとんどの撮像装置の「期待値」は、h = f tanθ です。これは、焦点距離に対する像高の正接に入射角をかけたもので、当たり前のことですが、f tanθ の物体-像の関係は、直線を撮影しても、直線が見えることを保証しています。

まず、f tanθ を例にして、ディストーション収差の本来の定義式を説明します。ここで 「f」 とは、有効焦点距離 (EFFL) ではなく、ディストーション焦点距離 (Distortion Focal Length) です。OpticStudioでは、近軸光線を追跡して光軸との交点を求め、EFFL を算出します。近軸光線とは、光学設計の言葉で言えば、0視野、非常に小さな瞳です。 例えば、(Hx, Hy, Px, Py)  =  (0, 0, 0, 1E-8) となります。EFFL の大きさは、明らかに像面の位置とは関係ありません。しかし、このディストーション収差の大きさは、明らかに像面の位置に関係しています。

歪曲収差の焦点距離を定義する際には、小さな視野の主光線 (Chief Ray) を追跡することになります。すなわち、(Hx, Hy, Px, Py) = (0, 1E-8, 0, 0) となります。視野が 0 に近づくと、収差はデフォルトで 0、つまり yref  =  ychief  =  ftanθ となり、ychief と θ はどちらも実光線を追跡して得ることができます。 上の式から逆算して、この時点での焦点距離fを求めることができます。この焦点距離はディストーション焦点距離であり、明らかに像面位置に関係しています。ディストーション収差の f はそのまま EFFL を使うことができないのはこのためです。

次は、実際に OpticStudio で光線追跡を行い、他のオペランドで焦点距離を求める方法を紹介します。簡単なシングルレットレンズを用いて説明します。

EFFL の計算:

  1. (Hx, Hy, Px, Py)  =  (0, 0, 0, 1E-8) で RAID オペランドを用いて像面の θ 値を取得します。
  2. (Hx, Hy, Px, Py)  =  (0, 0, 0, 1E-8) で RAGY オペランドを用いて面 1 の y 値を取得します。
  3. f = y/tanθ を用いて f を算出します。

この f 値は EFFL オペランドから得られた値と同じです。

ディストーション焦点距離の計算:

  1. (Hx, Hy, Px, Py)  =  (0, 1E-8, 0, 0) で  (REAB/REAC)  を用いて物体空間の tanθ を算出します。ここの θ は像空間ではなく、物体空間であること注意する必要があります。
  2. (Hx, Hy, Px, Py)  =  (0, 1E-8, 0, 0) で RAGY を用いて像面の y を算出します。
  3. f = y/tanθ を用いて f を算出します。

この値は「像面湾曲とディストーション」ツールから得られた値と同じです。

このように、求める光学性能によって、近軸の光線で計算する焦点距離が異なる事を紹介しました。OpticStudio 内の計算は、それぞれの用途で適切な焦点距離を用いています。